Monday, February 6, 2012

2012年2月6日(月) 午前版

先週及び金曜日の流れのまとめ

英国系投資銀行

Market update:
良好な雇用統計で円が全面安に 先週金曜は、米雇用統計で非農業部門雇用者数が 24.3 万人増、失業率が8.3%といずれも市場予想比良好な内容となったほか、その後発表の米 ISM 非製造業景況指数も56.8と市場予想を大幅に上回ったことを受けて、米 長期債利回りとドル/円の上昇が顕著となり、10 年債利回りは 10bps 程 度、ドル/円は一時 76.74 円へ上昇した。良好な米経済指標はスウェーデ ンクローナや豪ドルなどの世界景気敏感通貨も押上げ、円が全面安とな った。この間、他通貨とやや異なる動きを示したのがユーロで、米雇用 統計発表後に豪ドルなどにつれて一時対ドルで 1.32 ドル台へ上昇したも ののその後 1.30 ドル台へ大きく反落、ユーロの短期的なポジショニング はギリシャ債務交渉への楽観やイタリア国債利回り低下等を背景にロン グに傾いていた可能性が示唆される。なお、ポンドも英サービス業 PMI の予想比上振れで欧州時間に上昇していたが、米雇用統計を受けてドル 高・ポンド反落となった一方、カナダドルはカナダ雇用統計が予想比悪 化したことから一時下落していたが、米雇用統計を受けてむしろ豪ドル などに連れてカナダドル高・米ドル安となっている。 


米銀
金曜の動き 

為替

金曜のアジア時間には、目立ったニュースが無い中主要通貨は方向感に乏しい展開となった。LDN時間には欧州株が上昇する中でUSDとJPYがいずれも売られ、USD/JPYが狭いレンジ内での値動きを続けた一方で、クロス円は全般的に上昇した。NY時間朝方に発表された米1月雇用統計は予想よりも強い結果となり、指標発表後はUSDとJPYが主要通貨に対して売られたが、JPYの弱さがUSDを上回った結果、USD/JPYは76円台後半に上昇した。雇用統計発表直後にギリシャのパパデモス首相が辞任を示唆とのニュースが流れ(後に否定)、一時1.32台に上昇したEUR/USDは1.30台半ばに急反落。EUR/USDの下落が主導する形でUSDが一旦強含んだが、その後は米株が堅調に推移する中で再びUSD売りの流れが強まった。USDはJPYに対しても下落して、USD/JPYは76円台半ばに反落した。金曜日一日を通じて見ると、主要通貨の中ではSEKが最も強く、CAD、AUD、NOKが続いた。一方最も弱かったのはJPYで、CHF、USDが続いた。エマージング通貨は対USDで全般的に上昇。中でもZAR、MXN、INRなどの強さが目立った。原油先物は続伸。金先物は反落。

本日のシドニー時間には、ギリシャ向け第2次支援を巡るトロイカとの協議が難航との週末のニュースを受けてEUR/USDが下落、1.31を割り込んだ。EUR/USDの下落につられてその他の多くの主要通貨も対USDで下落したが、その後はEUR/USDが反発するのに伴い反発している。

欧米金利 

欧州債市場 :雇用統計発表までレンジでの動きとなった独国債10年金利は、予想より強い数字となった雇用統計が発表されると急激に上昇した。その後も、予想より強かった米国非製造業ISMを受けて、独国債10年金利は一段と上昇し、1.93%(+8bp)で引けた。イタリア国債金利は、直近続いていた金利低下の動きからはやや反発。欧州国債の対独スプレッドは、イタリアでやや拡大した他は、全体的に縮小した。

米国債市場 :米国債10年金利は、雇用統計発表までは小動きとなったが、事前の予想を大きく上回った雇用統計が発表されると急激に上昇した。その後も、予想を上回った非製造業ISMなどを受けて米国債金利の上昇は続いた。イールドカーブはベアスティープ化し、金利は、2年0.23%(+0.8bp)、10年1.92%(+10bp)、30年3.12%(+12bp)で引け。

経済指標他

米1月雇用統計は全体的に強い結果となった。非農業部門雇用者数は前月比+24.3万人と、コンセンサス(+14.0万人)を大きく上回り、失業率は前月比横這いとのコンセンサスに反して、前月の8.5%から8.3%と、2009年2月以来の水準に低下した。前回のFOMCで、Fedは失業率が今年第4四半期に8.35%に低下すると予想していたが、前回FOMCから僅か9日間で失業率はこの水準を下回ってしまったことになる。今回の雇用統計の強い結果は、Fedの金融政策にも影響を及ぼす可能性がある。当社は、前回のFOMCで示された「2014年後半まで」異例の低金利政策を続けるとの見通しがすぐに変更される可能性は低いとみているが、今後失業率の見通しが変更されれば、利上げ時期見通しも変更される可能性がある。また、当社はQE3が実施される可能性は3分の1程度とみていたが、2月15日に発表される前回FOMCの議事要旨を見て、この見通しを修正する予定である。

米12月製造業受注は前月比+1.1%と、コンセンサス(+1.5%)よりも弱い結果となった。GDPの算出に用いられるコア資本財出荷は上方修正されており、第4四半期のGDP設備投資に若干の上振れリスクがあることを示唆しているが、在庫の下方修正が上回る結果、当社は第4四半期GDPは速報値の前期比年率+2.9%から+2.8%に下方修正される可能性が高いとみている。

米1月非製造業ISMは前月の53.0から56.8に改善、コンセンサス(53.2)を大きく上回る強い結果となった。これは2011年2月以来の水準。もっとも、12月までの同指標は他の指標に比べて改善が遅れていたことから、今回の結果は12月までの相対的に低調な結果の反動による部分が大きい。

加1月雇用統計は予想よりも弱い結果となった。雇用者数は前月比+2300人とコンセンサス(+2.2万人)を大きく下回り、失業率も前月比横這いのコンセンサスに反して0.1%ポイント上昇、昨年4月以来の水準となる7.6%となった。今回の結果は、昨年第3四半期以降の加経済の減速が続いていることを示唆している。もっとも、BoCは 現在の金融政策を「著しく緩和的」とみていることから、今回の結果が追加利下げのリスクを高めることはないであろう。

英1月PMIの強い結果を受けて、当社はBoEの金融政策見通しを変更。当社は従来、BoEは今週及び5月の金融政策決定会合で各750億ポンドの資産買入れ拡大を決定すると予想していたが、PMIの強い結果を受けて各500億ポンドずつの拡大に予想を変更した。

今週の注目材料と見通し 

米1月雇用統計発表後USD/JPYは上昇したが、同指標発表後にUSDはJPY以外の通貨に対しては売られていることから、USD/JPYの上昇は「USD高」よるものではなく、「円安」によるものであったと言える。雇用統計の強い結果を受けて投資家のリスクテイク志向が改善し、USDもJPYも売られる中でJPYが弱いUSDに対しても下落した結果、USD/JPYは上昇したのである。

米雇用統計発表後に見られた、「リスク・オン」モード下でのUSD/JPY上昇は持続性を持つのであろうか。「リスク・オン」モード自体は暫く続く可能性が高いとみるが、こうした中でJPYがUSDよりも弱くなってUSD/JPYが上昇する展開は続かず、早晩USDが弱いJPYに対しても下落する展開に戻っていく可能性が高いとみる。上述したように、1月雇用統計の強い結果はFedの金融政策見通しに若干の影響を及ぼす可能性があるが、世界最大の経常赤字・対外純債務国である米国の短期金利がゼロというUSDにとって極めてネガティブな環境が当面続くとの見通しを大きく変えることは無いであろう。また、米株価とUSD実効レートは逆相関関係にあり、米株価の上昇は(金利が大きく上昇しない限り)USD安要因である。こうした中でファンダメンタルズ(対外ポジションとインフレ)がより強固なJPYに対してUSDが持続的に上昇する可能性は低いと考えられる。

但し、今回の雇用統計を受けた金利の動きには注目する必要はあるであろう。前述の通り、今回の雇用統計だけを受けてFRBが「2014年後半まで」異例の低金利政策を続けるとの見方を変更する可能性は低いが、今週水曜日と週末に予定されているバーナンキFRB議長の議会証言と講演には注目しておく必要はあるであろう。

USD/JPY相場と米非農業部門雇用者数のサプライズの過去の関係を見ると、非農業部門雇用者数のポジティブ・サプライズは雇用統計発表当日のUSD/JPYの上昇に繋がっており(チャート1)、金曜日のUSD/JPY上昇は過去の傾向どおりの動きとも言える。もっとも、雇用統計発表1週間後のUSD/JPYと非農業部門雇用者数のサプライズとの間には全く相関が無く(チャート2)、非農業部門雇用者数のポジティブ・サプライズを受けたUSD/JPY上昇が持続しないことを示している。また、TIPS金利は金曜、雇用統計の強い結果を受けて小幅マイナス幅を縮小したが、TIPS金利とUSD/JPYの過去の相関は依然としてUSD/JPYの下落リスクを示唆している(5年物TIPS金利との過去3年の相関から示唆されるUSD/JPYの水準は、先週金曜時点で74円台前半)。

足許の「リスク・オン」モードの持続性に対する最大のリスクは、引き続きギリシャのPSIを巡る協議の動向であろう。合意が近いとの報道が再三流れているにもかかわらず依然合意に達しておらず、本日予定されていたユーログループ財務相会合は延期された。

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